パンだ

ゆるくまったりと好きなことを好きなように

辞めるのか 私に断りもなく

辞めるなんてどこにも書いていないし、一言も言っていない、けれど。11月21日だった。武士沢友治騎手の所属変更がJRAホームページに載っていることを、自分はDMを貰ってそこから知った。残業して帰って、晩ご飯を食べ終わって、一息ついているときだったと思う。

www.jra.go.jp

びっくりした。すごく驚いた。同時に”もしかして”が頭に浮かんだ。
もしかして、武士沢騎手は騎手を辞めるのか?
フリーだった騎手が厩舎所属になるということについてあまり深く考えたことはなかったが、もしかして、武士沢騎手、騎手の次を見据えているのではないだろうか。フリーだったのに厩舎所属に変わるって何か心境の変化があったのではなかろうか。単に所属変更になりましたという事実だけを受け止めればいいのだとはわかっていても、近頃は乗鞍があまり無く、それに関してか否か勝鞍にもなかなか縁遠い現状を見て見ぬふりはできない。そろそろ……を考え始めてもおそらくおかしくはないだろうと考えはネガティブな方向に転がっていった。いつかはやってくる武士沢騎手の引退という事象を、この日はっきりと眼前に突きつけられたように感じた。杞憂ならばよいのだけれど……何年かずっと後に「まだまだ騎手やってんじゃん!」とこの時の自分の慌てぶりを笑えていることを願う。

そういう自分の狼狽えぶりを見て「さっき食べた晩ご飯全部戻すのかと思った~」とちょっと焦っていた夫に、少し経ってから意を決して伝えた。「競馬場行く回数増えるかも。いいかな?」最後に競馬場に足を運んだのはいつだったか。変わらなくても何ら問題は無いはずだが、やはり単身者ではなく暮らしをともにする他人がいるということは自分の趣味への向き合い方も若干の変化があり、何より夫の存在云々ではなく仕事のほうで精神&体力面を削られていて、気が付けば半年近く競馬場に行っていなかった。武士沢騎手を現地で応援することからも遠ざかっていた。でも、”もしかして”が見えてしまった。そして夫の返事は「いいよ~俺も行く~」ヤッタネ。

 

そして今日。先週の中山競馬場はえらい目に遭ったが、シグナルファイアーが連闘するというので今日も中山競馬場に足を運ぶことにした。

えっ

ぶっしー勝ってる

勝っとる!!!!!!

ううううれしいいいい! やったあああああ!! そりゃ思わず文字も大きくしますわ。色も変えますわ。このまま勝鞍を見られないで武士沢騎手が引退を決めたらどうしようと思っていた脳を大きく揺さぶってきた。8月20日に新潟4Rでシグナルファイアーと勝ってから今日まで勝てず、乗鞍は土日合わせても片手で足りるほどの日々が続いてきたところのこれ。しかも今日は新馬戦で14番人気のミサトベレーザと2着に突っ込んできたところのこれ。「もしかして騎手を辞めるのか……私に何の断りもなく……」と酒を飲みながら涙ぐんでいた人間の脳天をかち割ってくるような中山競馬場での一日だった。

 

それはそれとして、自分は情けなくも昨年度末近辺からいま現在に至るまで仕事+αの面でヒイヒイ言っていて、平日の疲れを土日で癒やせないまま月曜を迎え、競馬場に行くような気力や趣味に向かう気持ちが湧かないで一日一日をなんとかこなしている状態だ。推しが元気ならそれでOKみたいなそんな悠長なこと言っていられないというのが正直なところだった。でも、今日中山競馬場に行って、こういうシーンに立ち会えるなら、もうちょっと踏ん張ってみるのも悪くはないな、と思えた。そうだ、そうだった、自分は武士沢騎手のそういうところに惚れたのだった。

でも僕は元々、地味な存在だし、そんなにうまく事は運ばない。じゃあ自分の仕事は何かって考えた時に、与えられたことを地道にしっかりやって、後は流れに任せる。これが自分の生きる道だって気付いたんです。

小島友実「小島友実の好奇心keiba それ行け!現場 ジョッキー編 vol.60 武士沢友治騎手」『競馬ブック』2008年10月4・5日号

そういうところが、好きなのだ。

 

でもまあそんなことはおいといて、えっ可愛いね!? とシャッターボタンを押す手を止められなかったシグナルファイアーを載せて今日は終わりとする。